本当の意味で「100年安心」な年金って何だろう?

マネースクールUNOの岡です。

2015年4月、16年ぶりに公的年金の支給額が引き上げられます。 2014年度に比べ0.9%上昇、厚生年金を受け取る夫婦二人のモデル世帯では、受給額は22万1507円となり、2441円増える計算です。
ところが、「増えてよかった!」と、単純には喜べません。 実質的には、年金は「減った!」と考えなければならないのです。

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なぜ、もらえる年金が実質的に減るのか?

昨年1年間、消費税がアップしたこともあり、物価は2.7%上昇しました。 つまり、昨年1万円で買えていたものが、今年は1万270円出さないと買えないということです。
ところが、年金としてもらえる額が0.9%しか上がらないということは、1万円に対して90円しか増えていないということ。 1万90円では1万270円のモノを買うことが出来ない、つまり実質的に貰える年金は「減った」と考えなければならないのです。 年金は原則、物価や賃金が上がれば増え、下がれば減る仕組みです。

ではなぜ物価の上昇に比べ年金の上昇率が圧縮されているのか?

これにはおおむね2つの理由があります。
1つは「特例水準の解消」 現在の年金は、過去に物価が下がったときに行われるべき減額が不十分で、本来の水準よりも高い年金(特例水準)が支給されています。 今回は、その是正で0.5%が引き下げられるため、デフレだった過去約15年にわたって本来よりも高い水準だった状態が解消されるためです。

もう1つは「マクロ経済スライド」の実施、少子化と長寿化に伴う水準抑制になります。
マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

保険料を納める現役世代の減少と、年金を受け取る高齢者の平均余命の伸びを年金額に反映する仕組みで、2004年の年金改正で導入されました。 現役世代の「仕送り」負担を軽くし、次世代に年金制度を引き継ぐ「切り札」とされましたが、デフレが長く続き、物価や賃金が下がったときは実施しないルールがあるため、今までは実施されませんでしたが、昨年の物価の上昇を受け、2015年度に初めて実施され、0.9%が引き下げられます。 (0.6%が少子化要因、0.3%が長寿化要因です)

厚生労働省:マクロ経済スライドってなに? http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/popup1.html

年金額は物価上昇率と賃金上昇率を比べ、低い方を適用します。 物価上昇率が総合指数ベースで2.7%、賃金上昇率は2.3%となったので、2015年度の年金額は賃金上昇分が上乗せされ、本来2.3%増となるはずでした。

ところが、「特例水準解消」の0.5%、「物価スライド」の0.9%がそれぞれ引き下げられるため、この2つのマイナスを差し引いた0.9%の上昇に抑えられたというわけです。
(賃金上昇分2.3%?特例水準解消0.5%?物価スライド0.9%=0.9%)

これは、国民年金や厚生年金など、すべての公的年金が対象となります。 この年金受給額の実質減少、年金を貰っている世代にとっては、ちょっと納得いかない事かもしれません。
ここ1年、スーパーなどでの食品の値上がりが目立ち、なんとなくインフレを意識するようになっていませんか? そんな中、インフレに見合う年金をもらえないのは、たまったもんじゃないですよね。

一方、これから年金を貰う現役世代にとっては、今の年金受給者の年金受取額が
「もらいすぎ」であることに納得がいかないかもしれません。 マクロ経済スライドは、物価が下落しているデフレ環境下では使わないルールがあったため、当初計画の2007年度からの発動は大幅に遅れ、実施まで8年もかかりました。
マクロスライドを予定通り2007年度から適用していれば、年金の支給額は現役世代の収入と比べ54%に抑制できる見通しでしたが、マクロスライドが実施されなかったため、62.7%と高止まりしています。 もし今のままの状態が続けば、今現在30歳の人は、年金を受け取れるようになっても、現役世代の収入の50.6%しかもらえないとの試算もあります。 20代や30代の人が「年金不安」を口にすることにも納得の数字です。

私は、マクロ経済スライドや日本の年金制度改革の是非を問いたいわけではありません。 私達が改めて考えなければならないのは、貰える公的年金の受給額は、時代とともに変化しているということです。
今現在、国民年金の受給額は満額で年間約78万円、ところが1980年の受給額は約50万円、デフレが長引いた日本においてでも、35年間で56%もアップしています。 にもかかわらず、年金不安が叫ばれる中、多くの方が「自分年金」と称して積み立てを行なっている個人年金保険や終身保険は、将来もらえる金額を加入時に固定している「定額型」のものが圧倒的に多いはずです。

一般的な定額型の「個人年金保険」とは、例えば毎月1万円の保険料を払い、30年後から毎年40万円を10年間にわたって受け取れるようなものです。 1万円×12ヶ月×30年間=360万円の保険料を払い、40万円×10年間=400万円を受け取ったとしても、インフレで受け取る時期の物価が上がってしまっていれば、お金は「増えた」のではなく「減った」と考えるべきです。

現時点で貰える金額を固定しまうことは、決して「安心」ではないですよ!

「100年安心プラン」 これは、政府が2004年にマクロ経済スライドを導入した年金制度改革の際に使った言葉です。 公的年金の改革は国が行うことかも知れませんが、個人年金の改革は自分自身で行うものです。
将来の物価上昇に備え、公的年金は株や債券といったものでの「投資運用」をしていますが、定額型の年金保険は、「投資運用」はしていません。

皆さん、本当の意味の安心を、再度考えてみませんか?

(岡 知宏)

 

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