黒田投手が袖にしたMLBの年金制度と私的年金について思索。

マネースクールUNOの岡です。

2月に入り、プロ野球もいよいよキャンプインとなりました。
今年のプロ野球の見どころは、なんといってもカープの黒田博樹投手でしょう。
アメリカ・メジャーリーグ球団からの年俸約20億円のオファーを断り、年俸4億円でカープに復帰する黒田投手。

「お金じゃない!」

黒田投手が見せた男気に、カープファンならずとも「カッコいい!」と思ったのではないでしょうか?

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野球に興味のない方にとってはどうでもいい話かもしれませんが、今日は「野球選手の年金」、そして「私的年金」についてお話ししたいと思います。

アメリカ・メジャーリーグの年金制度は、ざっとこんな感じです。
・メジャーの選手登録が5年以上あれば資格が得られる
・10年以上の選手登録があれば満額受け取れる
・年金支給期間は60歳から死亡するまで
・年金受取額は、175,000ドル/年(1ドル=115円であれば、約2010万円/年)

ちなみに、イチロー選手はメジャーリーグで2001年からプレーしており、満額受給となります。

では、日本のプロ野球の年金はどうか? ざっとこんな感じ「でした」。
・10年以上の選手登録があれば資格が得られる
・2軍選手でも受け取ることができる
・年金支給期間は55歳から死亡するまで
・年金受取額は約120万円(月10万円)

この日米の年金格差を見ても、「やっぱりメジャーリーグは桁が違う」と感じてしまいすね。

ところで、先ほど「でした」と書いたのは、この日本のプロ野球の年金制度、現在は廃止されています。

そもそも、プロ野球選手は「自営業者」に当たるため、公的な年金の区分では「国民年金」を受給する立場になります。
そして、ここでいう「プロ野球の年金制度」とは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」ではなく、国民年金基金・厚生年金基金・確定拠出年金など、国以外の企業、各種団体が独自に運営し、公的年金に上乗せする形の「私的年金」にあたります。
そして、日本のプロ野球の年金制度は私的年金のひとつである「適格退職年金」の制度に近いものでした。
ところが、平成24年3月に適格退職年金制度自体が廃止となり、それにつれて日本プロ野球の年金制度も廃止となったのです。
この適格退職年金は、一般の企業や団体も多く加入していたので、このブログを読んで頂いている方の中にも「そういえば自分の会社の年金制度が廃止・変更になった」と思い出していらっしゃる方がいるかもしれません。

では、なぜ適格退職年金が廃止されたのか?
適格退職年金は、将来の退職金の支払いに備え、一定の掛金を計画的に外部に積み立てる「事前積み立て方式」を採っていました。
そしてこの積み立ては、一定の運用収益を見込んで行います。
この運用収益は当初予定利率5.5%という数字を用いて算出され、この数字をもとに掛金や退職金額が決まっていたのですが、低金利が継続したため実際の運用益が低下してしまいました。
必要な退職年金額を充たすためには、運用収益が低下した分、保険料(掛金)を増やさなければなりません。
そして、その保険料(掛金)は、仕組み上、会社の責任と負担で増やすしかないのですが、会社としても充分な負担が出来ず、その結果、積立金不足に陥ってしまった。
ざっくりと言えば、これが適格退職年金廃止の背景です。
適格退職年金だけでなく、私的年金の一つである厚生年金基金の解散が相次いでいるのも概ね同じ理由です。

廃止にあたって、この制度に代わるものも作られましたが、プロ野球と同じように、適格退職年金を利用していた多くの企業・団体が乗り換えをせず、資金難などを理由に企業年金をやめてしまっています。

そして、それに代わる制度の一つが、加入者である従業員自身が金融商品を選んで運用する確定拠出年金制度なのです。
確定拠出年金の詳細については、以下のUNOブログをご覧ください。

確定搬出年金 401K 関係ないですか?
http://blog.msuno.jp/2013/07/401k-9da2.html

確定拠出年金 もう少し詳しく語っていいですか?
http://blog.msuno.jp/2013/08/post-8dc4.html

なぜ、多くの企業が乗換をしなかったのか?
とある企業の年金担当者によれば、「新たな制度では資金運用リスクや加入者への運用教育などの負担が大きい。特に美容院や飲食店など個人経営企業は、その負担を嫌って廃止したケースが多いのでは?」とのことです。

適格退職年金も厚生年金基金も、完全に「おまかせ」な制度、従業員が運用について学ぶ必要はありません。
ところが確定拠出年金は、運用の指図は加入者自身が行わなければならないため、正しい運用についての知識が必要になります。

お勤めの会社で確定拠出年金に加入している皆さん、正しい運用の知識はお持ちですか?せっかくのいい制度も、運用方法を間違えてしまっては意味がありませんよ。

プロ野球の世界で、年俸数億円のスター選手であれば、将来貰える年金額はそれほど大きな問題ではないでしょう。
でも、そんな選手は全体の一握り。
日本野球機構が選手に対して行ったアンケートの結果によれば、74%の選手が「将来に不安がある」と回答しています。
平均在籍年数が8.5年と言われるプロ野球選手。
ファンを魅了する素晴らしいプレーの裏には、我々が想像する以上に「年金問題」が選手の頭をもたげているのかもしれません。

(岡 知宏)

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