あなたは勤めている「会社」をどこまで信じていけますか?

マネースクールUNOの倉田です。

 

先日、とある方が、自身が所属する企業の株式を大量購入すると言うニュースが大々的に報じられました。 彼はその会社に入社してまだ1年しか経っていないのに・・・

 

そして、その株式購入金額はなんと『600億円』!!

 

話題の主は「ニケシュ・アローラ」さん。 ソフトバンクグループの代表取締役副社長で、創業者である孫正義社長の「後継者」と目されている人物。

最近も入社後半年間で契約金込みの金額ですが165億円の報酬を受取っていた事で話題となった人物です。 彼は私財をつぎ込み貰った報酬をはるかに上回る金額で、自らが所属する会社の株式を大量保有する訳です。

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多くのサラリーマンが初めて「資産運用」を意識するのは、入社後に案内される「従業員持株制度」等の所属企業の株式購入ではないでしょうか? 東京証券取引所の昨年の調査によりますと、東証1部上場企業に所属する役職員のうち約40%が従業員持株制度を利用し所属企業の株式を購入、1人当たり平均保有金額は180万円ほどだそうです。 利用率は一時期より減っていますが、現在でも多くの方が利用しています。

 

サラリーマンにとって、自身が所属する企業の株式を買う事とはどのような効果が考えられるのでしょうか?

 

1つは手軽で・長く継続でき・親しみの湧く蓄財手段。 自分が働いている「企業」ですから親近感・安心感があり、さらに株式購入代金を給与天引きしてもらえるので始めやすく、勤めている間の長きに渡り継続でき知らず知らずのうちに大きな資産になる可能性があります。

 

2つめは働くモチベーションの向上。 企業の業績が良くなると所属企業の株価が上昇し、保有株式の資産価値が上がります。 永年やっている人ほど積み立ててきた株数も多くなっていることが考えられ、「資産」が上昇する効果はより大きくなります。 併せて企業業績の向上は皆さんのお給料やボーナスに反映させ、サラリーマンとしての「収入」を引き上げてくれる可能性があります。 自分達の頑張りが「資産」と「収入」にダブルの増加効果、当然ながら働く意欲も向上します!

 

サラリーマンにとっては身近な「所属企業の株式保有」。 資産形成の手段として始めやすく大きな成果を手にする可能性もあります。 しかし、働く者にとっては最も大きな危険が潜んでいます!

 

それは所属企業の経営状態が悪化、そして最悪の事態に至った時です。

 

企業業績の悪化に株価は敏感に反応し下落、最悪の場合は所属企業が「倒産」に至ります。 その場合、所属企業の株式は「無価値=ゼロ円」となってしまい、永年かけて積立て保有株数が多いほど「資産」の損失ダメージはより大きなものになります。

 

ここまでは普通に株式を買った場合も同じですが、「所属企業」の株式の場合は最悪の事態が。 それは同時に「収入」が消滅すること! 働いていた会社が倒産する訳ですから当然明日からのお給料とボーナスも出なくなります。

 

倒産の「精神的ショック」と併せ「収入」と「資産」の両方に大損失、まさにトリプルパンチです!! 「自分が働いている会社でしょ!?  内部の状況は分かるからサッと売って逃げたらいいよ~」 こう考えている方もいるかもしれませんが、現実はそう上手くは行きません。

 

金融業界で所属企業の倒産を経験した先輩や友人は口をそろえて言います。 「ニュースで倒産が報じられるまで、まさか自分が勤める会社が本当に潰れるなんて考えていなかった・・・」 大きな企業になればなるほど、末端の現場で日々一生懸命働く一社員には企業全体や深層部分で起こる状況を正確に推察する事はほぼ不可能です。

 

まして自身が選んだ企業、しかも「会社を立て直したい!」と直前まで同僚達と奮闘してきた状況、長く勤め現場の中核になればなるほど愛着も湧いてきます。 そんな状況の中、ニュースや噂で既に下がり始めている所属企業の株式に早い段階で見切りを付け、損失覚悟で全て売り切るジャッジをする事など容易な決断ではありません。

 

それどころか現実は逆の行動を起こす場合もあります。 自主廃業(倒産)した元山一證券の先輩は「潰れる訳ない!」と信じ、安くなった山一證券の株を「今がチャンスだ!」と従業員融資制度からお金を借りて倒産発表前日に買い増ししたそうです。

 

当時、同様に株を買い増す行動を取ったのは一部の社員ですが、”数人”と言うレベルでは無かったとのこと。 日々の業務で企業倒産の怖さを目の当たりにしている証券マンでさえ、自身の働く会社を信じるあまり冷静な行動は取れませんでした。

 

「所属企業の株式購入」 サラリーマンにとっては最も身近で最もリスクの高い資産運用。 冒頭紹介したソフトバンクのアローラ副社長、本人は勝算あっての行動だとは思います。

 

しかしそれ以上に偉大なる創業者の跡を継ぐ覚悟をあえて「最大のリスク」を冒す事で、取引先や株主そして従業員に示したと考えられます。 世間もその行動の真意と規模の大きさに驚き大々的に報じました。

 

規模の大小はあれサラリーマンにとっての従業員持株制度は同じ事で、「資産」と「収入」の大部分を所属企業の命運に託すのです。 「周りの同僚もやっているから」と安易に考えず、大切なお金についての行動の1つと考えるべきです。

 

あなたは勤めている「会社」をどこまで信じていけますか?

 

(倉田壮一)

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